※話の展開上、スザク×女子生徒な表現があります。ほんのり微エロ。嫌な方はブラウザバック。




あれからルルーシュはスザクの家へ向かっていた。
向かうといっても自分の家への帰り道のついで、それはもう慣れた道のりだった。
学園から徒歩で15分ほどのところにある、政治家や著名人の家が建ち並ぶ閑静な住宅街。
その中でも特別立派な佇まいを見せる一戸建てが枢木家だった。
真っ白な壁に赤い屋根。
まるで童話の中から抜け出してきたような外観でありながら、周囲の家の並びにも溶け込み馴染んでいるあたり、とても趣味がいい家だと毎度見るたびに思う。
さすがは政治家の邸宅と言ったところだろうか。
玄関の前に立って鞄の中から合鍵を取り出す。
スザクとこんな奇妙な関係に陥ってから持ち始めたこの鍵は、スザクに呼ばれればすぐにルルーシュが来られるようにと手渡されたものだった。
もうすっかり慣れた手つきで鍵を開け、玄関の中へと足を踏み入れる。
扉を開ければそこは勝手知ったる他人の家、そのまま家の中に上がろうとしてふと目に留まったものにルルーシュは足を止めた。
どうせスザクはまだ帰っていないだろうと思っていたが違ったらしい。
玄関にはスザクの靴と、そしてもう一足、見慣れない学校指定の女子用の靴があった。
またか、あの馬鹿。
一体何度、女を家に連れ込めば気が済むんだ。
スザクの女癖の悪さにつくづく呆れながらもルルーシュは元来た道を引き返すべく、くるりと背を向けた。
こういう時にこの家に踏み込むとろくなことにならない。
スザクたちの邪魔をしないように、と自分の用だけ済ませて静かに帰ろうとしても、何故か決まってルルーシュは二人と鉢合わせして結果、壮絶な修羅場になるというのがお決まりのパターンなのだ。
まあいくら幼馴染とはいえ一応は他人の、しかも年頃の男子の家に女子が勝手に上がりこむというのは、スザクの彼女たちからしてみれば許せない行為だろう。
しかしルルーシュにしてみれば、スザクと自分がそんな関係には到底なりえないとわかってるからこそ、毎回修羅場に巻き込まれる自分の方こそ真の被害者だと思っていた。
それでも同じ女として彼女たちの気持ちを理解できるから、精一杯の譲歩でできるだけ穏便に事を進めようと冷静に振舞うのだが、それがどうも相手には本当の彼女の余裕と見えるらしく、たいてい相手のほうが逆上してしまい、それにうんざりしたスザクが彼女をこっぴどく振るということになってしまうのだ。
直接的に彼女を振るのはスザクだが、原因の一旦は自分にもある。
だが毎度毎度憎悪の眼差しを向けられるのもいい加減うんざりだし、逆恨みされて被害を被るのもごめんだ。
どうせスザクは今、自分の部屋に彼女を連れ込んでよろしくやってるのだろうが、用心するに越したことはない。
ノートなんかもうどうでもいい、とっとと帰ってやる、と玄関のドアノブに手をかけた瞬間、リビングへと通じる一番手前のドアの向こうから聞こえてきた声にルルーシュは固まった。

「や、あああっ!」

っ!?
聞こえてきたのは間違いなく、女の声だった。
「や、恥ずかし…、っあ…」
「声出して。どうせ僕以外、誰も聞いてないんだからさ」
離れているはずなのに、くすり、と笑うスザクの声をルルーシュは確かに聞いた。
「あっ、んっ…ああっ」
次第に大きくなってゆく嬌声など耳に入らない。
スザクの言葉だけが、深くルルーシュの心に突き刺さる。

“誰も聞いてないんだからさ”

まさかリビングで事に及んでいるなんて思わなかったから、物音になんて気を使わなかった。
間違いなく、スザクはルルーシュが玄関前にいることに気づいているのだ。
だからあえて聞かせてやろうと大きな声で言ったのだ。

「ふっあ…や、あ」
「…っ、…」
「ああっ…あ、んっ」
切羽詰った女の声、堪えるように絞り出したスザクの声。
それがどうしても今の二人の様子を想像させて、ルルーシュは涙腺が緩みそうになるのを必死で堪えた。
(…っ、)
睦言なら、耳元で囁けばいいのに。
お願いだから、もうやめてくれ。
「んあ、スザ…クっ…ああっ!」
これ以上聞くに堪えなくて、零れる涙も構わずルルーシュはその場から逃げ出した。
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俺スザクが出てくるはずだったのに何故か登場しなかった。