自分の名前が話題に挙がった途端、ルルーシュは非常に嫌な予感がした。
一体何をするつもりなんだ。
また何か面倒なことじゃないだろうな…。
しかし心配するルルーシュを裏切って、ミレイの次の言葉にその嫌な予感は見事的中した。
「というわけで!これからルルーシュの誕生日祝いをするわ!名付けて、『ルルーシュ誕生日おめでとう!プレゼントは誰だ!?企画』!!」
「…はあぁ?」
生徒会室を一瞬沈黙が支配したが、すぐにルルーシュの素っ頓狂な声がそれを破った。
呆然と口を開けるルルーシュには目もくれず、ミレイはマイクに向かって叫ぶ。
「この企画の説明をするわね!期限は午後の授業が始まるまで。それまでにルルーシュ・ランペルージを捕まえられた人にはルルーシュの誕生日プレゼントになる権利が与えられまーす!」
その放送が流れるや否や、一部を除く学園中の生徒がそろいもそろって狂喜乱舞したことは言うまでもない。
「自分を誕生日プレゼントにしてルルーシュに捧げるもよし!そのままルルーシュをいただいちゃうのもよし!!どっちにしても、ルルーシュに自分を売り込む大チャーンス!!」
あまりに勝手な企画内容にルルーシュは、眩暈が止まらなかった。
「開始は10分後!あ、それから捕まえる手段は何を使ってもいい…」
ブチッ。
派手な音を立てて放送回線が引き抜かれる。
ルルーシュの方は怒りのあまりに震え、引き抜いた回線に握りつぶすほどの力を入れている。
「〜〜っ!会長っ!!」
非難の目で睨みつけるも、ミレイにとってそんなものは痛くも痒くもないらしい。
「いいじゃないの。することなくてつまらなかったのはルルーシュも同じでしょ」
「会長は暇でも俺は違うんです!いいから早く企画を取り消してください。こんなことに巻き込まれるなんて冗談じゃない」
「だ・ぁ・め・よ!もう決めちゃったもの」
ニヤリと笑う顔は心底楽しそうだ。
「それより、こんな所でのんびりしてていいの〜?すぐに全校生徒がここに押し寄せてくるわよー」
「絶対に俺はこんな企画に参加しませんから!」
ミレイはルルーシュの怒る姿をつまらなそうに眺めながら言った。
「いいわよー別に。むっさい男子に捕まって悪夢を見るのも、可愛い女の子に捕まっていい夢を見るのも、ルルーシュの自由だもの」
そんなの、どっちもごめんだ!
「…っ…わかりましたよ!やればいいんでしょう、やれば!」
観念したルルーシュの返事にミレイはにっこりと笑う。
「はぁーい、物分りが早くてよろしい!じゃ、いってらっしゃーい!」
楽しくて仕方がないというようなミレイを恨めしげに見遣る。
だめだ。この人の思いつきは嫌がらせでやってる上に、逆らえないからタチが悪い。
まったく面倒なことになったと思いながらも、こうなったら企画が終わるまで逃げ切るしかないと腹をくくる。
なぜか知らないが、自分はこういう企画のたびに追いかけまわされている気がする。
誰かに見つかって捕まりでもしたらどうなるかわかったものでないと、さっさと逃げようと踵を返したルルーシュにミレイが声をかけた。
「あ、そうだ。逃げる時の変装に役に立つと思うから、これ持ってきなさい!」
そう言って投げられた布の塊と、黒い物体に、ルルーシュのこめかみがピクリと動く。
「……っ会長!なんでこんなものまで用意してるんですか!絶対、事前から計画してたでしょう!」
わなわなと肩を震わすルルーシュの手に握られていたのは、アッシュフォード学園女子制服と黒のロングウィッグだった。