「やっと着いた…」
あまりの疲労感に、もう何もする気になれないほどルルーシュはぐったりしていた。
あれから自分の住まいであるクラブハウスにたどり着くまでにも、幾人もの妨害にあった。
先ほど上手く撒いたと思った女子生徒たちとばったり出くわしてしまったり。
(もう一度空き教室に逃げ込むことでなんとか引き離した)
いかにも屈強な男子生徒が数人、クラブハウス前でルルーシュを待ち受けていたり。
(危うく見つかるところだったが、植え込みの影に隠れながら見張りの目を盗んでクラブハウスの建物内に入ることに成功した)
とにかくあの手この手を使ってルルーシュを捕まえようとする生徒たちの執念は凄まじかった。
しかし自分は勝った!
クラブハウス内の自室に入ってしまえば、もうこっちのものだ。
さすがにプライベートな空間である自室までくれば、入りこんでは来ないだろう。
口からは安堵のため息がこぼれる。
しかし、背後に人の気配を感じたルルーシュはがばりと勢いよく振り返った。
「お兄様?お帰りになったんですか?」
「あ…ああ、ナナリーか…」
「?どうかしたんですか?」
「いや…なんでもないよ、ナナリー」
見えてはいないとわかっていても、妹に心配をさせまいとにっこりと笑う。
そうだ、今ここにいるとしたらナナリー以外にいるわけないじゃないか。
一度に色々なことがありすぎて、どうも混乱していたのかもしれない。
こんな所まで追手が来るわけないのに。
「お兄様?」
「なんだい、ナナリー?」
「ちょっとこっちに寄って来てくださいませんか?」
「いいよ」
ナナリーの車椅子の側まで歩いていって、目線を合わせるようにしゃがみこむ。
足音で側に来たことがわかったのか、ナナリーはにっこりと笑う。
ああ、我が妹ながら可愛いな、なんて兄馬鹿なことを考えていたら。
「捕まえましたよ、お兄様」
突然、自分の体に回されてぎゅっと抱きしめられた腕に困惑する。
「え?」
「ミレイさんたちが教えてくれたんです。お兄様を捕まえたら、今日一日お兄様を独り占めできるって」
「ナ、ナナリー?」
何か企画の内容が本来のものとは違って伝えられている気がすると思ったが、嬉しそうなナナリーの顔に何も言えなくなってしまう。
何も言わない兄に気をよくしたのか、ナナリーは抱きしめる力をさらに強める。
「そんなことしなくても、ナナリーはいつだって俺を独り占めできるよ」
本心だ。
ナナリーのためなら、俺は何だってできる。
「そんなことないです。だってお兄様には、私以外にも大事な人がいますもの」
「俺にはナナリーが一番大切だよ」
知ってます。
でも、それでも。
たまに不安になるんです。
いつかお兄様が私を置いていってしまう日がくるんじゃないかって。
だから今日だけは、ナナリーのわがままを許してください。
「それでも、お兄様を独り占めしたかったんです」
ナナルルED <だって私もお兄様が欲しかったんです。>