仕方ない。こんなところで迷っていたら、誰かに捕まってしまう。
そんな恐ろしいことになったら、と思うと手段を選んでいる暇などなかった。
手近な空き教室に入り、悔しさを必死にこらえて女子制服に手をかけた。
「くっ…!なんで女装までしたのにこんなに見つかるのが早いんだ!」
ルルーシュはミニスカートの裾が大きく揺れるのも、長く美しい黒髪(といってもウィッグだが)が乱れるのにも構わず、とにかく走っていた。
ルルーシュの背後からは複数の足音が聞こえてくる。
「あ、ルルーシュ君!見つけた!!」
「こっちよ!早く!」
「待ってー、ルルーシュ君!」
なんで女子たちは結託して動こうとするんだろう。
一人一人を撒くのなら頭を使えばまだなんとかなるが、あんなに大人数でかかられたら、誰だって捕まるに決まってるじゃないか!
何が誕生日おめでとう!だ。
そんなの口実だけで、俺はちっとも祝ってもらってない。
理不尽さでいっぱいの気持ちを抱えながら、それでも必死に逃げる。
長い廊下を走り切った先に、普段は使われていない空き教室があったのを思い出し、急いでその中へと飛び込む。
乱れる呼吸を整えながら、追手が通り過ぎるのを待った。
「あれ?ルルーシュ君いないよ」
「本当だ。どこ行ったんだろう?」
「うーん、仕方ないから戻る?」
その会話とともに、複数の足音がだんだん遠ざかっていく。
完全に足音が聞こえなくなったのを確認して、ルルーシュはようやく安堵の息をついた。
「はぁ…」
もううんざりだ。
なんで俺がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ。
しかし悲しいかな、毎回毎回同じことを思っても、結局のところ会長に勝てたことなど一度もないルルーシュは、すでに諦めという言葉を知っていた。
ここもあまり安全ではないだろう。
もっと見つかりにくいところまで避難しなくては。
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クラブハウスに行く。
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校内に留まる。