そのまま真っ直ぐに進んでも、誰にも出くわさなかった。
なんだ、たいしたことない。
これぐらいであれば、十分逃げ切れるだろう。
そんな風に高をくくっていたのがいけなかった。
次の角を何の警戒もなしに曲がる。
瞬間目に飛び込んで来た光景に、ルルーシュは注意を怠ったことを死ぬほど後悔した。
通路一杯を通せんぼするかのように、男子生徒がずらりと並んでいたのだ。
「いたぞ!」
「ランペルージだ!」
「っ!!」
これは相手が悪すぎる。
女子だったらまだ何とかなるかもしれないが、男子生徒にこんなにまとめてかかられたらひとたまりもない。
しかし逃げないわけには行かないので全力疾走するが、運動は苦手なルルーシュのことだ。
最初はかなりあった男子生徒たちとの距離も、すぐに縮められてしまう。
追いつかれまいと必死で突き当たりの角を曲がる。
「待て!」
「そっち行ったぞ!回り込め!」
大人数で取り囲むなんて卑怯だ!
咄嗟に叫ぼうとしたが、その前に突然伸ばされた手に近くの空き教室の中へと引っ張り込まれた。
「な、何す…ふごっ」
「静かにして、ルルーシュ」
「スザク?」
耳元で小さく囁かれた声は間違いなく親友のものだ。
「いたか?」
「くそっ、見失った!」
「あともう少しだったのに…」
息を整えながら、扉越しの会話に耳を傾ける。
「仕方ない。お前はあっちを探せ。俺たちはこっちを探してみる」
「わかった」
どうやら、外の男たちはこの教室に気付かなかったようだ。
ほっと息をついて、スザクに向き直る。
「ありがとう、スザク。助かったよ」
「どういたしまして。ルルーシュ、大丈夫?」
「これが大丈夫なように見えるか?」
はっきり言ってルルーシュは、ものすごく疲れていた。
「毎度毎度、会長に付き合わされてたらこっちの身が持たないよ」
「それはルルーシュが体力なさすぎるんだよ。ちゃんと食べてる?」
そう言って、身体に触れてくるスザクにルルーシュは戸惑った。
「ちょ…スザク!」
どこを触ってるんだ、お前!
スザクの手は腰をなぞり、あろうことかルルーシュの下半身にまで伸びていた。
「なに?ルルーシュ?」
「何?じゃない!どこ触ってるんだ!」
「いやぁ、せっかく二人きりで隠れてるんだから、と思って」
こんなシチュエーション、あまりないから勿体無いじゃない?
悪びれることなく、あっけらかんと言うスザクにルルーシュは絶句する。
「こんなところで盛るな!いつ誰が来るともわからないんだぞ!」
「大丈夫だよ。ルルーシュが声出さなければ誰も気付かないって」
ルルーシュの文句を封じるかのように、スザクはルルーシュの下半身に伸びた手に力をこめる。
「あっ…」
思わず声が出てしまったルルーシュは恥ずかしさのあまり俯く。
「ほら、ルルーシュも結構その気になってるじゃないか」
「…そんなことない!」
「そうかな?」
でも関係ないよ、僕がその気にさせてあげるから。
そう耳元で囁かれた声は、甘く柔らかく、ルルーシュの思考を溶かしてしまう。
たまにはスザクの思い通りにことが進んでもいいかななんて。
ついつい本気で考えてしまう。
その直後、暗転した視界にふわふわの茶色の髪が映って、ルルーシュは幸福に瞳を閉じた。
スザルルED <たまにはいかもしれないな。>