穏やかな冬の日の昼休み。
木枯らし吹き荒れる寒い屋外とは正反対に、アッシュフォード学園生徒会室は暖房がつけられ、まさに生徒会員たちの溜まり場と化していた。
長机に備え付けられた椅子に凭れ掛かるようにして座る生徒会長はもちろん、その他のメンバーも。
そして最近はめっきりここへと訪れる回数の減った生徒会副会長までも、珍しく生徒会室にいた。

「あ〜…平和だわ〜」
その言葉を聞いた生徒会メンバーはびくりと体を強張らせた。
なぜって、彼女のこういう言葉の後にはたいてい突拍子もない思いつきが待っているからだ。
一体何度その災難に巻き込まれたことか。
生徒会の皆は、麗しき生徒会長様の“退屈”という言葉にとにかく敏感だった。

「することないわね〜。何か楽しいことないかしらね?」
「ありませんよ。そんなことより早くこの書類の山を何とかしてください。それから会長の仕事を俺の分に紛れ込ませるのもやめてください」
億劫な動きでさりげなく自分の書類を数枚、ルルーシュの目の前の書類の山に紛れ込ませようとしていたミレイの手がぴたりと止まる。
「はいはーい。わかりましたよ…」
そう言って彼女はすごすごと引き下がる。

うん、平和だ。
いつもこれぐらいだったらいいのに。
ルルーシュが心の中で思ったことは、この場にいる誰もが一度は経験した感想だった。

そう、本日のアッシュフォード学園は平和すぎた。
普段の喧騒からは想像もつかないほど、穏やかな時間が流れていた。
ある一人の男が現れるまでは。
← Back / Top / Next →