ひっそりと城を抜け出した二人は、とりあえず市街地の外れにあるスザクの隠れ家へと逃げ込んだ。
「ごめんね、こんなに狭くて汚いところで」
窓から差し込む淡い月明かりだけが部屋を照らす。
体を休めるためだけの安っぽいベッドが一つに、小さな机と椅子が置いてあるだけの粗末な部屋。
いくら逃げてきて隠れる場所がここしかないとはいえ、皇女様を浚ってくるには些か不釣り合いな場所だ。
しかしルルーシュは薄暗い部屋に足を踏み入れても文句を言うどころか、綺麗な顔で笑った。
「構わない。私はあの宮殿からずっと出たかったんだ。そこから攫い出してくれたんだから、どんな場所だってついていくさ」
その言葉にスザクはどきりとした。
わかっている。
ルルーシュは閉じ込められていた籠から自分を盗み出してくれたスザクに感謝してそう言っただけで、その言葉に他意がないことくらい。
宮殿から抜け出してきたばかりのルルーシュにはスザクについていく以外に選択肢がないことも。
なのにスザクの自分勝手な感情が、ルルーシュの言葉を違う意味に捉えてしまう。
さっき責任云々の話があったことも、余計スザクを混乱させていた。

『どんな場所だってついていくさ』

連れ出してくれたからではなく、スザクしか頼る者がいないからでもなく、スザクだからついていく、とそう言われた気がして。
「ルルーシュ…」
「…スザク? どうかした…んっ!?」
不思議そうに見上げるルルーシュに心の中でごめんと謝って、すぐ側にあった体を抱きしめる。
驚きに声を上げる前にルルーシュの唇を塞げば、鼻に抜けるような甘い声が零れた。
(ごめんね、ルルーシュ)
もう一度内心で謝罪してルルーシュの唇を貪る。
何度触れても柔らかく甘いその感触にスザクは酔った。
「……んっ…」
軽く食むように唇を合わせれば、息が苦しくなったのかルルーシュがうっすらと口を開く。
その隙を見逃さず舌を滑りこませると腕の中でルルーシュが身じろいだ。




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