ルルーシュはただじっと黙ってスザクの言葉を聞いている。
その顔が恐ろしいほど無表情なのが、まるで責められているみたいに感じてスザクは必死で言葉を継いだ。
「君の事を憎んでなんて…」
瞬間、ルルーシュの美しい瞳が驚きで大きく見開かれる。
「…まさか。冗談だろう」
「冗談なんかじゃ…」
「嘘だ! お前は、俺を憎んで…」
「違うっ! 僕は…僕はっ…!」
ルルーシュは本当に卑怯で残酷だ。
あんなに頭が良いのに、こういうことだけはいつも気付いてくれない。
スザクがどれだけルルーシュに心動かされてきたか、どれだけの想いを重ねてきたのか知っていながら、こんなに残酷に突き放す。
「…君は卑怯だ。僕が君に寄せる気持ちを知っているくせに」
「だがそれでもお前はゼロレクイエムを選んだ」
「っそうだ。だけど、君だって…」
「それ以上は言うな」
「っ」
ルルーシュの言葉に怯んだわけではない。
それでもスザクはそれ以上を言えなくなってしまった。
「それ以上言ったら俺もお前も戻れなくなるぞ」
ルルーシュの表情を見てしまったら何も言えなかった。
すべてを諦めるとでも言うような、一切の感情が削ぎ落とされた顔。
こんなにも無機質で、哀しいルルーシュの顔を見るのは初めてで。
きっとルルーシュにだってわかっているのだ。
スザクの想いも、自分の心も、それでも進まなければならない道があることも。
「ルルーシュ…」
「俺たちにはもう立ち止まる時間など残されていないだろう?」
「………………」
「残酷なことを言っている自覚ぐらいはあるさ。だからスザク、お前は俺を恨んでいい。恨んで憎み抜いて、最後まで俺を赦すな」

『赦すな』

この言葉こそ、スザクを一生縛る呪縛の命令。
仮にも一度愛した相手を赦すなと、酷な願いをルルーシュは与える。
最後の最後までスザクの想いに応える気などないくせに、無駄に信頼だけを残して去るつもりなのだ。
これはお前に与えた罰なのだと、自分のいない世界ででもお前は自分を赦すことがあってはならないと。
そんな全幅の信頼が逆にスザクは怖かった。
ルルーシュと違って自分は弱い。
それだけ自分を信じてくれるのは嬉しいけれど、それに応えられる自信はなかったのだ。
「……赦すつもりなんてないよ。だけど憎み続けるのは多分僕には無理だ。だって君がユフィを殺したと知っても、僕は最後まで君を憎みきれなかったんだから」




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