「今夜くらいは本音で話してやればいいだろう。お前、最後まで本当のことを言わないつもりか」
「何のことだ」
わかっているだろうに、ルルーシュはあえてC.C.の言葉の意味に気付かないふりをする。
「はぐらかすのはよせ。お前が、枢木スザクに向ける想いのことだ」
「…………」
「お前は枢木の気持ちにも気付いているのだろう? お前があいつをどう思っているか…」
「今更俺の気持ちを伝えたところでどうにかなるのか? あいつに躊躇いが生まれる以外に、その他に何か計画に有利な状況が出来上がるとでも?」
皮肉気にふっと笑うルルーシュに、C.C.は目を見張った。
「……お前」
(気付いていないのか、自分で)
自分が今どんな顔をしているのか、自分がどれだけ寂しそうに笑っているか、この男は自覚していないというのか。
「……C.C.?」
こんなにも一目見てわかるほど、彼の心の奥は悲しみという感情を抱え込んでいるというのに。
誰が見ても明らかなほど、理解されることない孤独と戦っているというのに。
「…いや、何でもない。お前の言うとおりだな」
「わかっているなら無駄な問答はよせ。これ以上は意味がない」
「ああ、そうだな。すまなかった」
不快そうに眉を顰める彼に、C.C.は素直に謝罪した。
心から謝ろうと思ったわけではない。
ただ、目の前の男には何を言っても無駄だと悟っただけだ。
本当に、こいつは馬鹿だ。
誰よりも傷つきやすいくせに、そうやってあえて相手を遠ざける。
臆病で、怖がりで、そのくせ誰よりも愛情に飢えていて。
愛した男に本音の一つも吐けない、不器用で、本当に馬鹿な男だ。
どうせこいつのことだから、自分が本心を口にすれば枢木スザクの障害になるとでも思っているのだろう。そう、建前は。
だが違う。ルルーシュが守っているのは自分の心だ。
一度口に出してしまえば、自分の想いを止めることができないと知っているから。
あの男の傍にいたいと願ってしまうから。
だからルルーシュは嘘を吐く。
弱い自分の心を悟られないために、枢木スザクの心を押し留めておけるように。
そこまで全部わかっていて、それでもルルーシュは虚勢を張っているのだ。
最後まで嘘をつき通すとルルーシュが決めたのなら、もうC.C.がしてやれることなどない。
これだけ頑ななルルーシュの心を動かすことができるとしたら、それはきっとC.C.以上にルルーシュのことを知り尽くしているあの男だけだ。
「ルルーシュ、お前は最後の最後まで嘘つきで、本当に計算高い男だな」
「何を今更。気付いていなかったのか?」
「まさか。改めて思っただけだ」
「そうか。魔女にそう言ってもらえるとは光栄だ」
くすくすと笑うルルーシュ。
その表情にはやはりまだ哀しみの色が残っていたが、つられてC.C.もふっと表情を崩した。
こんな風に穏やかに笑える自分をどこかおかしく思いながら。




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