「ルルーシュに会いに来たんだ」
何と言おうか一瞬迷ったが、この際だから繕うのはやめた。
正直に本音を話したほうが、多分スザクには通じると思ったのだ。
「陛下に、何の用だ」
今まで見たことのないほど真剣さを滲ませて低く鋭く問うスザク。
同じラウンズとして一年以上、スザクと行動を共にしたが、どんな任務にあたっていた時にも見られなかった顔だ。
逆にそれだけ心から忠節を示すことのできるスザクがほんの少しだけ羨ましい。
自分は主であった皇帝陛下を失ってからずっと迷い続けている。
仕えるべきは国なのか王なのか。正直今も答えはわからない。
だからこそ、ここに来たのだ。
自分の心を賭してでも忠誠を捧げたいと思う相手は誰なのか、真実を確かめるために。
「ルルーシュと会って話したいんだ」
「…それだけのためにここまで来たって言うのか。こんな敵しかいない中に、一人で」
「ああ。それだけ大事なことなんだ」
自分の心を定める瞬間がついに来たのだ。
くよくよと悩むより、実際に行動するほうがよっぽど自分の性分に合っている。
「それにお前だって私の立場ならなりふり構ってなんかいられないだろう」
自分の信念を曲げてまでも結果を追い求め、ついには国内一の騎士の座にまで上り詰めたスザク。
その過程でなりふりなど構う余裕などなかったはずだ。
「…陛下とは本当に会って話すだけかい」
「ああ、勿論だ」
「なら、すべての武器をここに置いていくんだ」
スザクの静かな命令にジノは黙って頷き、ラウンズの制服の中から一丁の銃を取り出して床に投げ捨てた。
元々ここへやってきたのは話をするためで戦うためではない。たいした武装などしてはいなかった。
「…随分と躊躇いがないんだね」
諦めたように呟いたスザクはくるりと振り返り回廊の奥へと歩き出した。
ジノは何も言わずにスザクの後に従う。
真っ直ぐな気質の彼ならば自分を騙すようなことはしないとわかっているからだ。




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