「良い記事だろ? わざわざ俺がインタビューなんて面倒なものに答えてやっただけのことはある。それに前回のやつよりましな内容だと思うけど?」
にやっと笑って見上げてくるその顔に反省の色は見えない。
何を言っても無駄そうな様子に、思わず手の中の紙―――そもそもルルーシュがこんなにも声を荒げる原因となった校内新聞―――をぐしゃりと握り潰し、大声で叫んだ。
「お前はプライバシーって言葉を知らないのか!」
ルルーシュの手の中で虚しい音を立てて潰れた新聞には、こんな見出しがおどっていた。

『枢木スザクが証言! ルルーシュ・ランペルージの恋愛記録』

登校してきた途端目に飛び込んできたこの不愉快極まりない記事に、ルルーシュはここ最近自分がスザクに対して無視を徹底していたことをすっかり忘れ、思わずスザクに詰め寄ってしまった。
「どういうつもりなんだ! 前もそうだったが勝手に人のことを…」
一ヶ月前、ちょうどスザクとルルーシュが付き合い始めてすぐの時に貼り出された校内新聞を思い出す。
しかもあの時は最悪な写真―――今思い出しても腹立たしいが、スザクにファーストキスを奪われた時の写真だ―――付きだった。
あの記事のおかげで散々学園中で噂が飛び交い、かなりの精神的ダメージを食らったのは記憶に新しい。
だが詰め寄られたスザクはとても冷静だった。
「どういうつもりって、お前が俺から逃げるからだろ」
スザクの答えにルルーシュはどきりとした。
「な、なんのこと…」
「とぼけたって無駄だぞ。お前、新学期始まってからここ二週間の間、ずっと俺のこと避けてたじゃないか」
事実を言い当てられてぐっと返答に困る。
だがそれでも正直に認めるわけにはいかないので、ルルーシュは誤魔化した。
「お、お前の気のせいじゃないのか? 私は別にスザクのことを避けてなんか…」
「いいや、違うね。お前は俺を避けてる。まあいいさ。お前のほうから俺に話しかける気になったなら好都合だ。じっくり理由を聞かせてもらうからな」
絶対に逃がさないというオーラを漂わせるスザクに、ルルーシュはさあっと血の気が引いた。
「まさかそのためにこんな記事を…?」
「当たり前だろ。こうすればお前は必ず俺に難癖つけに来るだろうからな」
悪びれるどころか何を当たり前のことを、といった様子のスザクに、ルルーシュは本気で眩暈がした。
前々からついていけないところがあるとは思っていたが、まさかこんな強引な手に出るなんて。
正直これならスザクを避けなければ良かったと思うがもう遅い。
だがそんな後悔より、まずこの自己中男に言ってやりたいことがある。
きっとこいつは何度言おうと理解しないのだろうが、それでも言わずにはいられない。
「……っそんなことのために人のプライベートを公開するなこの馬鹿―――っ!!」
肩をぷるぷると震わせて、ルルーシュの怒りが再爆発した。




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