※ジノスザです!でもほんのりスザルル風味。嫌な方はブラウザバック!




彼の部屋を訪れたのはこれが初めてだ。
ずっと軍人を続けてきたという彼の部屋は思った通りに、私物の少ない質素な部屋だった。
「プライベートまで悪いな。至急の書類だって言うからさ」
「別に。仕事なんだから構わない」
差し出された書類を機械的に受け取って、私室であるにもかかわらず一際存在を放つ執務机の前へと腰をおろす。
手渡された書類をじっと眺める彼の声は、ともすれば不機嫌とも取れるほど感情が乏しい。
必要な会話を済ませるとジノの存在などまるでないように目の前の書類に目を通し始めた彼に、手持ち無沙汰になってしまったジノは室内に視線を走らせた。
自分のプライベートに関することはまったく話そうとしないスザクのことだ。
きっとこんな機会でもない限り私室を見ることなどないだろう。
彼がどんな私生活を送っているのか、気にならないこともない。
ざっと辺りを見回して、机の上に無造作に置いてあるアルバムに目が吸い寄せられる。
持ち主の許可なく見るなど良くないとわかってはいたが、好奇心には勝てなかった。
スザクが気付かないのをいいことにアルバムへと手を伸ばし、何気なく中を開く。
その時ちょうどそのページに挟まっていた一枚の写真がはらりと床へ落ちた。

「なあ、スザク」
「………」
ジノが話しかけてもスザクは相変わらず書類に向き合ったままだ。
しかし次のジノの一言でスザクは意識をジノに向けざるを得なくなった。
「これ誰?お前の彼女?」
「…?」
ジノが示した一枚の写真。
そこに写る一人の人物の姿にスザクの動きは完全に止まった。

深紫色のドレスにすらりとした体躯を包み込み、はにかむようにして立つ一人の人物。
ドレスと同じ色の切れ長の瞳は戸惑いに揺れ、絶世の美貌をより一層際立たせている。
それはまさに一目見た者を虜にする魔性の美。

「あれ?もしかしてビンゴ?」
悪戯が成功した子どものように楽しそうに笑う同僚が憎らしい。
しかしそれを表に出すことなく、冷たく返した。
「別に」
「お前が動揺するなんて珍しいじゃんか。ずいぶん美人だよな〜。恋人なんだろ?認めろよ」
スザクの目の前でひらひらと写真を振るジノ。
それが無性に苛ついてスザクは写真をジノの手から奪い取った。
「っ!返せっ!」
「なんだよ。そんなにムキになるなんて、やっぱり彼女なんじゃないの?」
「違うって言ってるだろ」
心底鬱陶しいとばかりに視線を逸らすスザクに、ジノはにやりと笑った。
「ああ、それとも」
写真を奪い取る時に机から身を乗り出したスザクの顎を掬い取り上向かせ、視線を合わせる。

「それとも、俺に見られたから焦ったとか?」

身長差を縮めるようにぐっと顔を近づけて囁く。
しかしジノの一方的な行動にも、スザクは眉一つ動かさずに真っ直ぐにジノを見据え続けた。
「…そんなわけないだろ」
そっけなく返すスザクの瞳は静かな光をたたえてはいるが、全く動かない。
「なあ、その子どっかの令嬢か?」
「……」
「どこで出会ったんだよ?」
「……」
「お前の彼女じゃないってんなら、俺が貰っちゃおうかな」
「…………」
全く無反応かと思ったがそうでもないらしい。
ジノの一番最後の呟きにスザクの眉がピクリと動き、こちらを見つめる眼光が人を射殺せそうなほどに鋭く研ぎ澄まされる。
さきほどより長い沈黙が、スザクの不機嫌さを如実に表していた。
「ん?別に彼女じゃないってんなら構わないだろ?お前に許可とる必要もないし」
こちらの考えを見透かしているのかと思うほど、ジノはスザクの痛いところをついてくる。
なんだかもうすべてが馬鹿らしくなって、スザクは思考を手放した。
「……勝手にすれば」
顎にかかる手を払いのけて視線をずらし、吐き捨てる。
拒絶するかのように答えたスザクに、少し満足そうに、けれど不満そうに笑ってジノは言った。
「駄目だなあ、そういうときは少しぐらい嫉妬してくれないと」
そうしてゆっくりと近づいて来た彼の顔に、スザクは抵抗を諦めて瞳を閉じた。
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とあるサイト様でジノはバージンと他人の彼女好きそうって書いてあったのに激しく萌えて出来上がった話。
ちなみにバージン→スザク、他人の彼女→ルルのつもり。