text内にある「夜道の邂逅」、「純情少女」の続きの話です。高校生スザルル(♀)




シャーリーが直情的なのは今に限ったことではない。
本人に悪気はないが、思い込みは激しいほうだし、思ったことはすぐ行動に移そうとするし、とにかく彼女がかなり行動力のあるタイプだということは重々承知していた。

していたのに、ついうっかり口を滑らせてしまった。

「い、一緒に帰った!?」
「シャーリー、声が大きい!」
もう少し声を潜めてくれと宥めるルルーシュなどお構いなしに、シャーリーは声を張り上げる。
「だって、あのスザク君と一緒に帰ったって!」
「だから声が大きいって!」
先ほどからちらちらと寄越されるクラスメイト達の視線が痛い。
その大半の視線が、ルルーシュが噂話に花を咲かせているのを何とか聞き出そうとする男子たちと「スザク」という単語に反応した女子たちから向けられていることは言うまでもない。
「なななんで!?なにがあったの!?」
ぐいっと身を乗り出して聞いてくるシャーリーの目は完全に据わっている。
これはおそらく全部話さないかぎり絶対に解放してくれないと確信したルルーシュは、早々に観念することにした。

「だからあれはたまたま生徒会の帰りが遅くなって、そうしたら部活帰りのスザクに会って、それで…」
「それで?」
「…傘を忘れたって言ったら、傘を貸してあげるって言われて。でもスザクが濡れるから借りられないし、なら一緒に帰ればいいって」
「言ったの!?」
「…う…言った…けど」
「けど、じゃないわよ!」
ルルーシュの言葉一つ一つに大げさに反応するシャーリーは相当興奮している。
語気鋭く迫るその様子に、ルルーシュは泣きたい気持ちでいっぱいだった。
私は何も悪いことなんかしてないのに!
「確かに言ったけど、別にそれは深い意味はなくて、ただ単にどっちかが濡れて帰るよりは一緒に帰ればいいんじゃ、って提案しただけで…」

ルルーシュの的外れな言葉にシャーリーはあんぐりと口を開けた。
一目でわかるほどこんなに動揺しておいて、それでいて深い意味はないって?
これはどうみても明らかにスザク君を意識してるじゃない。
なんというか、恋に関して奥手な性質だとは思っていたが、あまりにも自分の恋心に疎すぎる。
このままでは恋人になるどころか告白なんて夢のまた夢。
こちらが少しぐらいは手助けしてやらないとダメかもしれない。

「それで、結局どうなったわけ?」
このまま詰め寄っていても埒があかないと、少し声を抑えたシャーリーに安堵したのか、ルルーシュは強張っていた顔の表情を緩めた。
「…だから、結局二人で帰ろうって話になって、家まで送ってもらったけど…」

今ものすごい爆弾発言が落とされた気がする。

「今何て言った?」
「え?」
「送ってもらった?!家まで??」
「え?あ、いやその」
シャーリーが叫んだ言葉に教室の隅々からの視線が鋭く突き刺さる。
もはやちらちら盗み見る程度ではなくなった不躾なそれらからルルーシュは逃れたかったのに、シャーリーの言葉はそれを許してくれなかった。

「なに!?そこまでもういっちゃったの二人!」

このとき爆弾発言を落としたのは間違いなくシャーリーだと、後のルルーシュは語った。
「ちょ…違う。何の話だっ!」
「そうなのね…ルルってばもうそんなところまで…」
「なんだその誤解を生む言い方は…って、ま、待て!!」
「ねー聞いてよ、ルルってば…」
「っておいシャーリー!やめろおおお!!」
近くで聞き耳を立てていた女子のグループに駆け寄って、あらぬことを吹き込もうとしているシャーリーを必死で止めようとしたルルーシュの全力の叫びが、空しく教室中に響いた。
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