text内にある「夜道の邂逅」、「純情少女」の続きの話です。高校生スザルル(♀)




ああ、すごいなあ…
優しいだけじゃなくて運動もできるんだ…

もう授業も終わった放課後。
昼間は教室に溢れ返っていたクラスメイト達も帰宅したり部活に向かったりと姿を消し、今の教室に人影はない。
そんな静かな教室の中でルルーシュは窓際の自分の席に座り、窓の外を眺めていた。
視線の先ではクラスの男子達がバスケットボールをしている。
その中でもひときわ目立つ存在に、ルルーシュはすっかり見入っていた。

いつも完璧な姿ばかり見せる彼女にしては珍しく、机に肘をついてぼんやりと窓の外にいる一人の人物に視線を定めている少女。
あまりにも心ここにあらず、な状態でひたすら外を見つめているルルーシュを見て、生徒会の用事で彼女を訪ねてきたミレイの悪戯心に火がついた。
生徒会副会長にして、生徒会長であるミレイの可愛い可愛いお人形さんと化しているルルーシュである。
ミレイとしてはこんなに面白い状況をからかわない手はない。

ルルーシュは今、恋をしている。
本人は自分の気持ちに気付いていないようだが、はたから見ていれば丸わかりだ。
少なくともルルーシュと親しい人物なら、今までの彼女との違いにすぐ気付くだろう。
そんなことを考えながら足音を立てないようにそっと、ルルーシュへの背後へと近づいた。
しかし、その足もルルーシュの表情を見てぴたりと止まる。
へにゃり。
視線の先の人物がゴールを決めた姿に笑み崩れた彼女の顔は、まさに恋する乙女だった。
ああ、まったく。あれで本人は無意識だなんて。
あんなにわかりやすい態度なのに、どうして自分の気持ちに気付かないのかしら?

まだ少し離れていた距離を一気につめて、今日も今日とてスザクを遠くから眺めることに夢中なルルーシュに、ミレイは後ろから抱きついた。
「ルルちゃん?な〜に見てるのかなあ?」
「か、会長!」
「おや〜?普段だったら私が抱きつく前に気付いて避けるのにね」
「え…?あ、いや、べ、別に…」
わざとらしくちらりと窓の外に視線をやって、ミレイは話を核心へと進めた。
「あれ〜?あそこに見えるのは…枢木スザク君だっけ?」
「っ!」
「普段は他人に興味のないルルーシュが熱心に見てる相手って誰なのかと思ったら、彼だったとはね。男を見る目あるじゃないの」
「へっ?」
どういうこと?と疑問に首をかしげるルルーシュに、ずばりはっきりと言ってやる。

「だって、ルルーシュはスザク君に恋してるんでしょ?」

「え…?」
こ、恋!?
違う!そんなことない!
いや、だって、私は…
「そ、そ、そんなことあるわけないだろう!」
「そんなに動揺してたら説得力ないわよ…」
混乱でしどろもどろに答えるルルーシュに、これは一度はっきり言ってやらなきゃダメかしら、とミレイは呆れ顔ながらも口を開いた。
「いい?ルルーシュ。正直に応えてね」
ルルーシュに真っ直ぐ向き合って、ミレイは珍しく真面目な顔で続ける。
「スザク君のことが気になる?」
「…うん」
「スザク君のこと、もっと知りたいって思う?」
「…うん」
「スザク君と一緒にいるとドキドキする?」
「………」
「ルルーシュ?」
ミレイに促すように顔を覗き込まれて、ルルーシュは恥ずかしくて堪らなかった。
真剣に見つめてくる瞳に俯いてしまう。
言葉に出すのすら恥ずかしくて、やっとの思いで小さく首を縦に振った。
やっぱりね、といわんばかりに溜息をついたミレイに、ルルーシュの視線が自然と吸い寄せられる。
そしてミレイが次に告げた言葉に、ルルーシュは美しい瞳を見開いた。

「それはね、恋してるっていうのよ、ルルーシュ」
Back / Top