ブルジョミでハートの国のアリス(PCゲーム)のパロです。
ゲーム内容を知らなくても読めますが、多少のネタバレしてますので嫌な方は読まないでください。








ねえ、ジョミー。
ゲームには必ずルールがあるんだ。
守らなきゃいけない、絶対のルール。
君がこの世界に来ることも初めからルールで決まっていたんだよ…





美しい自然と風景に囲まれたアタラクシアの郊外に建てられたある一軒の家。
普通の一般家庭よりも立派といえるであろう落ち着いた外観の邸宅に、美しい花が咲き乱れる広い庭。
青々とした草の匂いと、降り注ぐ優しい午後の日差し。

そんな穏やかな風景の中で、ジョミーは母親のお茶に付き合っていた。
いつも通りの休日、優しい母親。
今日もなんの変哲もない日常が過ぎていくはずだった。

その日常が破られたのは、あまりにも突然だった。
お茶の葉を取りに母親が家の中へと入った途端、いきなりこいつが現れたのだ。

人間と同じ服を着て眼鏡をかけ、懐中時計を首にぶら下げた白ウサギ。
どこからともなく現れた着飾ったウサギの存在を不思議に思うも、次の瞬間そんなことはジョミーの思考から吹っ飛んでしまった。

なんとそのウサギは信じられないことに二本足で目の前を走り抜けたのだ!

あまりの衝撃にジョミーは、体を動かすことができなかった。
服を着たウサギが僕の家の庭を走っているなんて、おかしすぎる!
きっと自分の見間違いだ。
見間違いに決まってる。
というより、見間違いであってくれ!
服を着て走り回るウサギが見えるだなんて、正気の沙汰じゃない。
きっと僕は疲れているんだ。
今の記憶はすぐに頭の中から抹消しなくては、と目を閉じた。

「…って、そこ!そこは追いかけなきゃダメだろう!無視するなんてひどいじゃないか!」
「っ!?」

自分の周りに声を発する者は誰もいなかったはずだ、と思い驚きに目を見開く。
その瞬間、目の前に広がる光景に思わず眩暈を覚えた。
まさか、そんなはずは。
ジョミーの目の前に立っていたのはあのウサギだったのである。

ウサギがしゃべった!?
いや、そんなことあるはず…

「話し掛けているんだから、何か言ってくれないと困るよ。また無視するのかい?」

…間違いなくしゃべっているのは、このウサギだった。

「………」
えーと。
うん、気にしちゃいけない。
僕は何も見なかったんだ。
余計なことに関わるとろくなことにならないぞ、自分。
そう思って無視を決め込もうとしたのに。

「無視するなんて悲しいじゃないか。それならこっちにも考えがあるよ」

さきほどの声が聞こえた瞬間、目の前のウサギの体がぱぁっと光りだす。
ウサギの体を包み込むような光の眩しさにジョミーは思わず目を閉じた。
そしてその光の収まりを待って目を開けたジョミーが見たのは、ウサギではなかった。

「なっ…なっ…!」
なんで!?
さっきまでウサギだったのに!
今目の前に立っているのはどうみても人間じゃないか。
いや、人間とは言い切れない。
なんせその人間の頭には真っ白なウサギの耳が生えていたのだから!

突然のウサギの変貌に驚きのあまり動けないでいるジョミーに構わず、ウサギ(?)はジョミーの顔の前へと手をかざす。
その手が先ほどと同じ光を発し始めたのに気付いて、ジョミーは焦った。
ああ、どうしよう!
僕もウサギ耳なんかついちゃったら!
そんな心配をよそに、目の前のウサギはにっこりと笑って言った。

「まずはその格好を変えないとね。ジョミーにはもっと可愛い服のほうが似合う」
「へ…?」

不思議に思って自分の見た瞬間、ジョミーは思わず叫んでいた。
「なっ…なんだこれーーー!!!」
なんと自分が着ていたのは、普通は女の子が着るであろうフリルをたくさんあしらった水色のワンピースだったのだ。
男の僕がなんでこんな格好をしなくちゃならないんだ!
そう文句をいってやろうとジョミーが口を開くのより早く、ウサギは次の行動に移っていた。

突然感じた浮遊感、地面から離れた両足、高くなった目線。
そして何より、自分の体に回された力強い腕。
あろうことかウサギはジョミーをいわゆるお姫様抱っこという体勢で抱え上げていたのだ!

「な、なにするんだ!」
勝手に人に女装させた挙句、女扱いまでするのか!
あまりの悔しさに手足をばたつかせて抵抗してみるものの、思いのほか強い力で抑えられてしまって。
「そんなに暴れると危ないよ。間違って落としちゃったらどうするんだい?」
その言葉を聞いたジョミーの抵抗が小さいものに変わったのを見計らって、ウサギは腕にジョミーを抱えたまま走り出す。

「ちょっと待て!どこに行くんだよ!」
「ジョミーが望む世界だよ。」
「僕が望む世界…?そんなもの此処以外にないに決まってるじゃないか!」
優しい両親に囲まれて、何不自由なく暮らして。
そんな幸せな世界以外を自分は望んだりしていない。
「いいや、そんなことはない。君は心のどこかで思っていたはずだ。違う世界に行きたいってね」
「そんなことない!」

そんな言い争いのうちにウサギは庭のはずれまで来ていて。
ウサギが立ち止まったのを感じたジョミーは、視線を目の前のウサギから庭へと移して絶句した。
自分の目の前の庭には、大きな深い穴があいていたのだ。
な、なんだこれ?
こんな穴、昨日までうちの庭にはなかったのに。
だがその穴に向かってウサギは迷いもなく足を進めている。
ジョミーは嫌な予感を感じながら、自分を抱えているウサギを見遣った。
まさか…

「ジョミーが本当に望む世界かどうかは、行ってみればわかるよ」

目の前のウサギが穏やかな笑みでそう告げた瞬間、ふわりと浮いた感覚がジョミーの体を襲う。
まさか…まさかとは思ったが。
僕、もしかしなくても落ちてる!?

「う、うわあああぁぁぁーーーー!!!」

恐怖で叫んだ声は、ウサギと共に穴の中へ飲み込まれていった。
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東谷さんちの拍手画像のアリスジョミーがあまりに可愛いかったので、書いてしまいましたアリスパロ。
しかも自分の趣味丸出しで『ハートの国のアリス』のパロです。
これはPCの乙女ゲームなのですが…設定は激しく萌!ですよ!(美声の杉田氏も出てます)
気になった方はチェックしてみてください。
この話はとりあえず出会い編。当然ながら続きがあります。
ブルジョミはのんびり書いていくつもりなのでそのうちupします。