(ジョミー)

ああ、ブルーの声だ。
夢の中で僕を呼ぶ、心地良い声。

このシャングリラに連れてこられたばかりの時。
今まで信じていたものをすべて否定されて。
あなたの言うことが信じられなくて。
あなたが僕を連れ去るために払った犠牲も、僕を迎え入れてくれた皆の好意もすべて見なかったふりをして。
その結果、自分勝手な行動で迷惑をかけた。

特にブルー、あなたには。
いや、迷惑なんてものじゃない。
だって僕のわがままのせいで、あなたは眠りから目覚めることすらできなくなってしまった。
シャングリラの皆が僕を不満に思うのも当然だ。
誰からも信頼され、頼りにされているソルジャー・ブルーが倒れた原因は僕にあるんだから。


(ジョミー)


ああ、ブルー。
ごめんなさい、僕のせいだ。
僕が家に帰りたいなんてわがままを言わなければ、あなたを傷つけることもなかったのに。
ごめんなさい、ごめんなさい。
それでもいまだに家族や友達を忘れられない僕を、許してください。


(ジョミー、忘れなくていい。それは君だけが持つ大事な記憶だ。)


わかってる、でもだめなんだ。
忘れたくないけど、でも。
あなたを傷つけてしまったのに。
皆に迷惑をかけてしまったのに。
それなのに僕だけ幸せな記憶に浸っていることなんてできない。


(ジョミー、苦しいのなら全部吐き出すといい。ここでは、この夢の中では誰も君を咎めたりはしない。)


だめだ、そんなことできないよ。
これ以上ブルーに迷惑はかけられない。


(そんなことは考えなくていい。それに迷惑だなんて思っていない。)


だめだ、だめなんだ。

どうして僕にそんなに優しくするんだよ。
これ以上そんなことを言われたら、抑えられなくなるじゃないか。


(抑えなくていいんだ、ジョミー)


「…っ」
彼の低く優しく語りかける声を聞いたら、もうだめだった。
堪えきれなかった涙が目尻から溢れて、僕の頬を濡らす。
訳も分からず涙が零れて、自分の涙の熱さに頭の中が真っ白になる。
それがますます僕の瞳から溢れる雫を止まらなくさせる感覚に、とうとう僕は意識を手放した。





(ジョミー)


思念で呼びかけても反応がなくなったのを確認して、ジョミーがようやく深い眠りについたのだと察する。
まだ新しい環境にも馴染めず、今まで信じてきたものに裏切られてボロボロになった心を必死に支え、僕が倒れたことを自分が原因だと気に病む彼の姿が、あまりにも痛々しくて。

僕の体はもう思うように動いてくれなくて、こちらから彼の元へ行くことはできないけれど。
夜、自らのベッドで眠りにつく時にしか本音を曝け出すことのできない彼を、こうして思念を送って慰めることはできる。
本当はそれしかできない自分の無力さを呪いたいのだけれど。

彼に重い運命を背負わせてしまったのは、僕だ。
だから少しでも彼の心が軽くなるように。
少しでも彼の心に安らぎがあるように。

ねえ、ジョミー。
君がこれから進む道を一緒に歩いてあげることはきっともうできないけれど。
それでも僕は君を、誰よりも大事に想っているよ。

そんな思考を自分の意識の奥に沈めながら、ブルーは自らも深い眠りの底へと落ちていった。
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唐突に書きたくなったブルジョミです。
最終回放送終了してるにもかかわらず、4、5話あたりの話でごめんなさい。
まだ10話までしか見てないので、矛盾とかあったらどうしようかと内心かなりビクビクです。
ついでにブルーの一人称が「僕」で合ってるのかもわかりません。(行き当たりばったりですみません…!)
うちのサイトに置いておいても需要があんまりないと思うので、私を見事にテラにはまらせてくれた東谷さんに捧げたいと思います。
かなり駄文ではありますが、貰ってやってくださいませ。